学習障害があると「どうせ私にはできない」と、勉強に対するやる気が失われがちです。そんな子どもに対しては勉強を教えるより先にやってほしいことがあるんです!子育ての本質を理解して、子どもの自信とやる気をアップさせるヒントをこちらでお伝えします。 |
勉強への自信とやる気をなくした学習障害があるKちゃん
私は大学院生の頃、日本の特別支援教育を牽引する先生の研究室に入っていました。
先生の専門は学習障害(LD)です。
◆学習障害(LD)とは?
LDには、教育的立場と医学的立場の2つの考えがあるので、日本の中ではとてもわかりづらい位置にいる障害ですが、
教育でいうLDとは、知的発達には遅れはないが「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」能力のうちのどこかに、特異的な苦手さがある場合をLDがあると捉えます。
LDの支援で難しいのは、同じ「聞く」が苦手だとしても一人一人によって、苦手な理由が違ったり、伸ばし方が違ったりすること。
日常生活の支援はある程度の知識でできても、学習支援となると、相当の専門性が必要になるよね、というのが発達の子どもたちへの勉強の教え方の常識です。
◆学習障害があるKちゃんとの出会い
研究室の先生が、ある教育出版系の大手企業に依頼を受け、発達障害の子のための学習塾の創設を試みたことがあります。
私がこの教室で担当したのが小学校1年生の女の子、Kちゃん。
Kちゃんは、ひらがなの特殊音(小さい「やゆよ」、小さい「つ」、伸ばす音など)が何度やっても理解できなくて困っていました。
お母さんと相談して、ひらがなの読み書きができるように、と指導計画を立て、勉強をスタートしました。
ですが、Kちゃんの一番の問題は、「やる気」。
もうすっかり勉強への自信をなくしていて、教室へ通ってきていても
つまんなーい
帰りたーい
こんなのできないもん
となってしまうのです。
斜に構えた態度にお母さんは「先生にそんな失礼な態度とるんじゃありません!」と叱り、Kちゃんは泣いてしまう・・・ということが何度もありました。
勉強指導の前に自信回復!その結果…
完全に自信とやる気を失ってしまったKちゃんと、子どもを想うあまり苦手を克服させるため厳しい言葉で叱るKちゃんのお母さん。
そんな状況で、私はKちゃんの勉強指導の前にお母さんのサポートをすることに方針をシフトしました。
お母さんと相談して、まずは、Kちゃんの勉強以外のところの自信をしっかり回復することから始めましょう。と方針を決めました。
お母さんにKちゃんの自信回復に徹してもらい、私はそのサポートをする、という形を取ったのです。
その結果、なんと、読み書きできなかったひらがなの特殊音、自分でできるようになっちゃったんです!
私たちがやったのは勉強を教えることじゃなくてKちゃんの自信を回復すること、ただそれだけでした。
子どもって結構自分の課題をわかっているんだな〜。
自信が溜まればちゃんと自分の課題にも取り組もうとし始めるんだな〜。
Kちゃんの姿を見て私も学ばせてもらいました。
自分から前向きに勉強に取り組むKちゃんの様子にお母さんが涙を浮かべていたのを今でも鮮明に覚えています。
では、どうやって自信を回復していったのか、次章でお伝えしていきますね!
子どもの自信を回復させ、発達を加速させる支援方法とは!?
Kちゃんの自信回復のためにしたこと。それは、「できた!の成功体験」と「“褒める“コミュニケーション」、このたった二つのことです。
◆できた!の成功体験
教室へ来たときも、苦手なひらがなではなく、Kちゃんの大好きな点つなぎのワークをしたり、カルタを一緒に作ったりと、うまくできた〜!の体験を作ることを重要視していきました。
苦手なところを、なんとかできるように!と学校でも家でもやられていたKちゃんは、すっかり自信をなくし、その表現として、先生の揚げ足を取ったり、屁理屈を言ったりしていただけで、
できるね!楽しいね!が積み重なると自分からちゃんと苦手にも取り組もうとしていきました。
◆“褒める“コミュニケーション
家では、できているところだけしっかり褒めてもらいどんな様子か報告してもらいました。
お母さんが褒められないときは、こんな視点があるんじゃないですか?とアドバイスしたり、お母さんががんばっていることを私が褒めたりしながら進みました。
Kちゃんの成長を誰よりも願い望んでいたために、厳しく叱っていたお母さんですが、少しずつ今までのコミュニケーションを変えてもらいました。
Kちゃんのお母さんは、専門的な指導が必要だから、と研究協力を申し出る形で私たちのプロジェクトに応募してこられました。
とても教育熱心で、子どもの将来のためにできないことは早めに訓練しないと!と思っておられたそうです。
ですが、子育ての本質ってできないことをできるようにすることだけじゃないんですね。
自分で伸びる力を信じてあげること、自分で伸びる力が発揮されやすいようにちょっとだけ手を貸してあげること。
お母さんとのコミュニケーションが、やっぱり一番大事!
Kちゃん親子に教えてもらった大事な本質は、今の自分の子育てにも、お仕事の中にも大切な軸として持ち続けています^^
きっとあなたの子育てや生活にも置き換えて考えると、困りごと解決のヒントが見つかると思いますよ。
執筆者:石澤かずこ
(お母さんの小学校★ななほし代表)
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