上の子が下の子を叩いて困る、ということありませんか?もしかすると、「上の子優先」が、知らず知らず「弟優先」になっているかもしれません。ASD傾向のお兄ちゃんには、「正しく上の子優先」をすると、とっても頼もしく優しいお兄ちゃんになりますよ。 |
優しかった兄が、攻撃的になった日
我が家には、2歳3か月差の年の近い兄弟がいます。
お兄ちゃんは、弟が私のお腹にいるときには、自分専用のエコー写真をもらうほど弟が大好きで、産まれてからも一緒にミルクをあげたり、お風呂では体を洗ってくれたり、お世話を一緒にするほど、とっても優しいお兄ちゃんでした。
しかし、あるときから弟を叩いたり、噛んだりするようになりました。
それは、弟がハイハイが上手になってからです。
弟は10か月くらい、お兄ちゃんは3歳1か月ほど。
高速ハイハイをし、伝え歩きもできるようになってきました。
ハイハイする弟は、わざわざ兄のもとへ行き
・兄が作り上げたものを壊す。
・兄が使っているものを取る。
・兄の大切にしている物も口に入れる。
集団生活をしたことのないお兄ちゃんにとって、初めての経験でした。
私は、お兄ちゃんが弟を攻撃しないように、遊ぶ場所を分けたり、兄の作った作品や大切にしている物は、弟が届かない場所に移動させたり、さまざまな工夫をしました。
しかし、物の取り合いだけは避けられませんでした。
弟にオモチャを取られる。
兄:「あー取ったー!」
私:「使っていないと思ったんだよ。」
兄:「使ってたんだよ!返して!」
「返してくれない!」と泣く。
弟から、無理やり取り上げて、オモチャで頭を叩く。
後で使おうと思って横に置いていたオモチャを弟に取られ、その辛さを誰にも理解してもらえない。
泣いている弟は、抱っこされ、優しくされている。
弟に敵対心を抱き、思い通りにならなくなってきたお兄ちゃんの攻撃席は増し、腕を噛んで無理矢理オモチャを取り返す、というようなことも起きるようになりました。

自閉症スペクトラム(ASD)傾向の上の子が、下の子を叩く理由
お兄ちゃんは本当は優しくて、誰にでも話しかけるくらい人が大好きなんです。
だけど、自分のテリトリーに入ってくる人は敵だと思ったり、人の気持ちを理解することが難しく、自分も気持ちを言葉にすることが苦手でした。
やりたくて、攻撃しているわけではないんです。
本人もどうしていいか分からなくて、叩いたり噛んだり、体を使って表現をするしかありませんでした。
理由は、扁桃体と前頭葉にあります。
人は、扁桃体で喜怒哀楽を作り、感情を記憶し、前頭葉で感情をコントロールしています。
我が家のお兄ちゃんの場合、自閉症スペクトラム(ASD)傾向があり、他の子よりも、ストレスを感じ取りやすいタイプでした。
扁桃体でストレスを感じ取ってしまうと、自分に自信がなくなったり、攻撃的になったりよくない方向に脳の発達が進んでしまいます。
下の子が生まれると、よく「上の子を優先しなさい」と言われますよね。
我が家も、しっかりとお兄ちゃんを優先していたつもりでした。
ですが、よく考えてみたら、毎日何回も、弟を理由にしていたんです。
・お兄ちゃんが「〇〇に行きたい」と言ったとき、「まだ弟は遊べないから」
・「もっと遊びたい」と言われたとき、「オムツ替えるから、帰るよ。」
どうでしょうか。
お兄ちゃんは、いつも弟がいるから、自分のやりたいことができなかったし、辛い気持ちを誰にも伝えることもできず、ずっと我慢をしてきたんですよね。それに気が付いたとき、お兄ちゃんの気持ちに気付いてあげられなくて、私はすごくショックを受けました。
そして、ASD傾向の子は、記憶力が良いという特徴もあります。
記憶力が良いなら、次に物を奪われたときに違う方法を試せればいいのですが、負の記憶がよみがえり、同じ行動をしてしまう傾向があります。
負の記憶を消すには、沢山の成功体験を積むことが大切になってくるのです。
負の記憶が薄れていくと、自分に自信がつき、前頭葉での感情コントロールが上手くできるので、気持ちを言葉にすることが上手になってきます。

「正しい」上の子優先はコレ!
息子の場合、家族内で疎外感を感じていたことがストレスになっていたので、安心を与えることを成功体験として積むことにしました。
兄の思いを尊重する
弟のお世話が必要なとき、必ずお兄ちゃんの気持ちを聞くようにしました。
「〇〇遊び、楽しそうだね。」
「オムツを替えないといけないの。コレが完成したら、おうち帰ってもイイかな?」
「オムツ替えたら、〇〇食べよう。」
一方的に遊びを中断されると癇癪につながるので、必ず事前に話をし、お兄ちゃんも納得して次の行動に移る、ということをしていきました。
兄の両親一人占めタイム
お父さんだけ、お母さんだけ一緒に遊ぶ、ではダメなんです。弟がいなかったときのように、親子3人で過ごす時間が、お兄ちゃんを満足させます。
例えば、昼間なら、弟が寝ている少しの時間。3人でくっついてテレビを見たり、特別なお菓子を食べたり、弟がいると出来ないことをしていました。
そして、夜は両親の添い寝。
どうしても不可能なこと以外は、お兄ちゃんの希望を叶えることにしました。
これらを続けるうちに、お兄ちゃんは落ち着きを取り戻し、弟を叩いたり噛んだりすることは減っていきました。
家族の中に自分がいても大丈夫だという安心感を得たことで、弟の存在を認めることができ、弟に優しいお兄ちゃんに戻ることができました。
ちょっとしたことの積み重ねが、子どものストレスを増幅することもあれば、逆に子どもを安心させることもできる。
もし上の子の攻撃性で困っている方がいれば、試していただきたいです。
執筆者:渡辺ひろみ
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