自閉症スペクトラム(ASD)タイプで時間への強いこだわりがあり、決まった時間を1分でも過ぎると癇癪を起こしてしまう幼児のお母さんへ。こだわりとの上手な関わり方、捉え方、また実際に我が家で実践したこだわりを和らげる方法をご紹介します。 |
自閉症スペクトラム(ASD)の特性である強いこだわりには色々な種類があります
発達障害、発達でこぼこ、グレーゾーンで特に自閉症スペクトラム(ASD)傾向の子どもの中には強いこだわりがあり、その対応に悩むお母さんは多いと思います。
こだわりと言っても、感覚過敏、聴覚過敏からくるもの、自分の中でルールがありそれを守りたいことからくるもの、いつも同じもの・ことが安心するというものなど、実に様々です。
こだわりは脳の特性からくるもので、本人からするとどうしても我慢できなかったり不安に感じてしまうことであるので、やめさせようとしたり他のことを強要することは、大きなストレスになり対応には注意が必要です。
今回はこだわりのなかでも「時間を守りたい」というこだわりについてお伝えしていきます。
時間へのこだわりが出てきて困っていました
ASD傾向の我が家の息子に時間のこだわりの強さが出てきたのは、年長になり時計を正確に読めるようになってきた頃でした。
「夜は19時までに寝室に入る」
これを何が何でも守ろうして、夕飯もお風呂も急ピッチ。
それまでも服や食べ物へのこだわりは多少ありましたが、その通りにならずとも怒ったり癇癪を起こすということはなかったため、こだわりへの対応に頭を悩ませるほどではありませんでした。
そのため゛時間"についても「ちょっと過ぎてもいいじゃん~」と軽く考えていました。
ところが、ある日19時をたった1分過ぎてしまっただけで、初めてといっていいほどの癇癪が起きました。
「過ぎちゃった~」と号泣、なかなか泣きやみませんでした。
初めての本格的な癇癪に戸惑いましたが、守れないと本当に嫌なんだなと、こちらもしっかり対応しなければと感じました。
なぜ19時なのかと本人に聞いたところ、前に父親に19時までに寝る準備をしようと言われたことがきっかけだったと言われました。
そのときのシチュエーションに合わせて言っただけで深い意味はなかったのですが、自己流解釈で「せねばならない!」と記憶していたことが発端だったようです。
それからは19時までに寝室に行けるよう、帰宅前までに段取りをしっかりとしたり、後片付けをしたいけれどとりあえず置いておいて…と、こちらもそれなりに気を遣う生活が始まりました。
が、19時早いですよね…
帰宅が遅ければ何でも急がせてしまいますし、こちらも夕飯の準備ができていないと焦る、などピリピリ、イライラする日も沢山ありました。
また、寝室に行ってからは戦いごっこや本を読んだりと(就寝前の親子の大切なスキンシップの時間なのですが)、すぐに寝るわけではないのならそこまで急がないでほしい、と思うのも本音でした。
また当時懸念していたこととして、19時に寝室に入るのが難しい泊りがけの親族行事の予定があり、その対応をどうしようかとも考えていました。
こだわりとの上手な関わり方と実際に我が家で行ったこだわりを和らげる方法、3つのヒント
時間へのこだわりをまず受け止める
こだわりは本人がどうしても我慢できないことであり、特にASD傾向の子どもは決まったことに安心感を覚えるという特性があるため、その決まりが破られることに対して大きな不安があるのです。
そのこだわりを否定したり解決をしようとする前に、まずあなたはそう思うんだね、と何よりもまず「受け止める」ことがスタートです。
たかが1分過ぎただけ?と思いますが本人が嫌だ、不安だ、と思ってしまうのは仕方ないこととまずはお母さんが受け止めてあげましょう。
「お母さんは聞いてくれるんだ」と思うことで子どもの気持ちは安心し、次にお母さんが話すことに耳を傾け聞いてくれる準備にもなります。
また、今までなかったこだわりが出ている場合には、疲れが溜まっていたり嫌なことがあったりと、不調な時期にこだわりが強くなっている可能性があります。
息子の場合は、当時幼稚園に元気に登園できるようになった半面疲れも感じていたので、頑張っている反動で出ているこだわりなんだなと思うようになりました。
許容できることならば極力そのこだわりに付き合ってあげるのも大きな安心に繋がります。
ただし家庭の都合もあるので、落ち着ているときに子どもと話しをして折衷案を作ることも一つです。
我が家の場合は、19時までに私と娘のお風呂が終わらない日もあるけれど、そのときは先に一人で寝室に行くと本人が納得して実行していました。
時間を守れることはメリットであると思う
時間を守れない、早く寝てくれない、というお悩みの方が多く、我が家のような早く寝室に行って寝る準備をしたい!という例は少数派かもしれません。
ルールを全然守らないよりは、融通は効かないけれど必ずルールを守るという特性は長所と言っていいでしょう。
自分で時間を決め動けるのは、今後学校生活、社会生活において必要なスキルです。
メリットと思い、上手く許容して付き合えると良いですね。
非日常で決まった時間を過ぎる機会を作り、時間を過ぎても大丈夫なことを経験してもらう
とは言っても、ずっと19時を守れるかというとそういうわけにもいかず…
着るものや食べ物など実物があるものではなく“時間”というものに縛られて生活に制限が出てしまうのもいかがなものかと考え、我が家では次のようなことを実践してきました。
非日常の中で好きなことを絡めて時間が過ぎても大丈夫であることを体験してもらう機会を作りました。
具体的に言うと、
◆好きなレストランへ行くけれど19時を過ぎることになる
◆旅館に泊まるが大浴場と夕飯の時間が決まっていて19時には間に合わない
など、あらかじめ息子ルールは守れないが大丈夫そうかと話し、本人が納得したら出かけるということです。
本人が好きなこと、やりたいことであったので、結果は時間を気にすることなく楽しく過ごすことができました。
また「19時を過ぎてしまっても何も不安はないよ、大丈夫なんだよ」と都度話しをし、実際に時間を過ぎても平気な様子の息子に対して「大丈夫だったね、過ぎても安心だよね」と声を掛けました。
懸念していた泊りがけの親族行事ですが、どうしても嫌な場合は無理強いはしないと夫と同行する祖父祖母と話しをした上で参加しましたが、結果は時間を気にすることなく参加することができました。
こうして少しずつ“19時を過ぎても大丈夫だった”という経験を積み重ねることで、自宅でも自分から「今日は19時を過ぎても大丈夫~」と言うことが増えてきました。
今でも時間は気にしますが、寝る時間が遅いよりはとびきり早くても寝る準備ができるほうが良い!と割り切って段取りをしています。
発達障害、発達でこぼこ、グレーゾーンの特性は捉え方によって短所にも長所にもなります。
親も子どもも気持ちよく毎日を過ごせるよう、上手く付き合えるヒントになれば嬉しいです。
執筆者:菅 美結
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