子どものイヤイヤや癇癪など、子育てにイライラはつきものですね。もしその心の不調が生理前に限って現れるのであれば、月経前症候群(PMS)のせいかもしれません。なぜ怒りっぽくなるのか?脳科学と女性ホルモンの関係に注目して解決していきましょう! |
子育て世代の女性を悩ませる心の不調の正体
生理前のイライラ…つらい!
子育てをしていると、なかなか避けて通れない子どものイヤイヤ、癇癪の相手…つらいですよね。
特に、生理前!なんだか怒りの沸点が下がったように感じていませんか?
いつもなら我慢ができるようなちょっとしたハプニングも、あれよあれよという間にすぐ大爆発!ふと我に返って自己嫌悪…というお母さんも多いかと思います。
程度の差あれ、生理前はイライラしがちになってしまっても不思議ではありません。
子育て世代の女性が闘う「PMS」
あなたは、月経前症候群(PMS)という言葉を知っていますか?
生理の3~10日くらい前から始まる心と体の不調を指し、イライラ、不安、怒りっぽくなる…という気持ちの変化は子育て世代の多くの女性を悩ませています。
現在私は、産科・婦人科専門の病院で薬剤師として働いています。
そう、でこぼこキッズを育てるママ薬剤師です。
日々の子育てのイライラを、脳科学×女性ホルモンの視点から解決できる方法をお伝えしていきます。
脳科学×女性ホルモンのお話
PMSの原因?プロゲステロン
女性ホルモンの1つであるプロゲステロンというホルモンを知っていますか?
プロゲステロンは、生理周期の中盤の排卵後からグンと分泌が高まり、次の生理が始まるころに急激に分泌量が減ります。
このプロゲステロン。
実は、脳の感情系エリアの中心である扁桃体という部分を、ちょっぴり反応しやすくしてしまうことが知られているのです。
脳の感情系エリアのリーダー!~扁桃体~
脳の感情系エリアの中心とも言える扁桃体とは、とても原始的で本能的な脳の機能を司る部位の1つです。
この働きは、動物として、敵や危険な状況から身を守るための大切なシステムだと考えられています。
恐怖や不安などといった感情をつくり、「この状況は危険だ」と警笛を鳴らし、記憶と結びつける役割をします。
例えば、あなたにも、思い当たることがあるかもしれません。「怖い、悲しい、ショック…」という強い感情が生まれた記憶って、ずっと忘れないですよね。
私自身も、幼児期、旅行先の動物園で迷子になった記憶は今でも鮮明です。
本能的に命を守るため、ポジティブな感情よりも、ネガティブな感情に対してよく働くと考えられています。
生理前に怒りっぽくなる理由
さて、今回のお話の中心であるプロゲステロンは、妊娠を維持するため、つまりおなかの赤ちゃんを守るために働くホルモンです。
排卵後、妊娠に向けて、扁桃体の反応性を高めているのです。
つまり、自分の遺伝子を後世につないでいく赤ちゃんを守れるよう、ネガティブな状況へより過敏に反応してしまうのですね。
そして、残念ながら排卵が妊娠につながらなかった場合、「赤ちゃん、やって来なかったな…」ということを脳が判断し、プロゲステロンの分泌量が一気に減ることで生理がやってきます。
この瞬間、子宮の状態もイライラ気分もリセットされます。
これが、生理前に限って怒りの沸点が下がり怒りっぽくなってしまう理由の1つです。
感情のコントロールが難しくなるにはワケがある
10倍の差!?プロゲステロンの波
ご存じのようにすべての排卵が妊娠につながるわけではありませんが、子育て世代の女性の体は常に妊娠に備えようとしています。
動物として、種を残していく本能的な機能かもしれません。
ですが、現代の人たちは出産回数がとても少なくなりました。
何人も子どもを産んでいた50~60年前の日本人の生涯の生理の回数は約50回などと言われていますが、現代では平均2回ほどの出産を経験し、生涯の生理の回数はなんと約500回。
10倍もの差があるんです。
そうなんです!この500回もの間、女性はプロゲステロンのアップダウンを経験することになります。
気分の変動があって当然
扁桃体の働きは本能的なものであるので、制御することが容易ではありません。
気分の波があって当然です。
生理前にイライラする…に苦しみながら子育てしているお母さんはとても多いはずです。
しかし、
気持ちの持ちようのせいじゃないか?
自分の我慢が足りていないだけじゃないか?
子どものイヤイヤや癇癪に振り回されるなんて…
と、自分を責めているお母さんの多いこと。
お母さんのせいではありません。
人によって差があるとは言え、やっぱり脳なんです。これを知るだけで、ちょっと気が楽になりませんか?
要注意!大人も子どももイライラ爆発はクセになる
ところで、この扁桃体はもちろん子どもにもあります。
当然ですが、扁桃体の活動をコントロールする思考系のエリア(脳の司令塔のような部位)の働きは大人に比べてまだまだ、まだまだ未熟です。
子ども自身もイライラや癇癪をコントロールできないのは当たり前、と思いましょう。ですが、癇癪はクセになる場合もあるので、上手に脳を育ててあげる必要があります。
癇癪っ子の感情の脳を育てるバイブル!ぜひこちらもダウンロードしてご覧ください▼▼
忘れてほしくないことは、お母さんも一緒、ということです。
イライラからの大爆発!はクセになります。
ホルモンの流れに身を任せるのではなく、意識して対応していきましょうね!
こちらでも子育てに役立つホルモンについてお話しています▼▼
PMSで悩むママのイライラコントロール術
まず、大前提として、PMSの症状はお薬で改善できる場合があります。
こんなことで病院なんて…と思うかもしれませんが、大丈夫です。そのために私たち産科・婦人科のスタッフが存在します!
日常生活に支障があるほどの症状が見られるときは、ひとりで我慢せずに医療機関にご相談くださいね。
お薬での対処方法がある!といったお守りを持った上で、家庭でできる対応策をお話していきます。
◆まず、深呼吸!
扁桃体は、自分の身を守るために瞬間的に活動が始まります。
そして、そこで生まれた感情を分析してコントロールする思考系のエリアが活動し始めるまで、少しタイムラグがあります。
ぜひ、それを待ってほしいのです。
10秒もあれば十分です。それを待つためのおすすめの時間の使い方が、深呼吸です。
深呼吸には、リラックスしているときによく働く副交感神経の活動を優位にもっていく効果があります。
子どものイヤイヤ・癇癪が始まったら、ぜひ、10秒かけて吸って吐いて…を試してみてくださいね。
◆「次はどう褒めよう?」思考系エリアを働かせる
次に、脳の思考系のエリアの活動を活発にさせていきます。
子どものイヤイヤ・癇癪は、PMSに悩むお母さんの扁桃体を直撃するはずなので、意識して扁桃体の活動を脳の思考系エリアにシフトしてしまいましょう。
「この癇癪がおさまったらどんな肯定の声かけをしようかな?」と考えることがおすすめです。
子どもの癇癪には取り合わず、どのように褒めるか考えながら平静を装ってください。ここが、お母さんのスルースキルの見せどころです。
ただし、PMSに悩むお母さんは、なかなか扁桃体の活動を思考系エリアにシフトすることが難しいこともあるでしょう。
最終手段として、どうしても無理…と思った場合は少しその場を離れてください。(お子さんの安全は確保してくださいね!)
パパや、その他の頼れる家族がいたらぜひ力を借りましょう。
1時間でも30分でも、自分の時間を意識して作っていくと扁桃体の活動は次第に落ち着いていくはずです。
扁桃体の活動が活発なときに冷静な判断は難しくなりますので、扁桃体への刺激を意識的に減らし、一呼吸おいて落ち着いてから子どもと接するように心がけましょうね。
子どもの癇癪の正しい対応法は、こちらでも詳しくお話しています▼▼
しつけがきかない子どももいます!不注意キッズを叱らない子育てはこちら▼▼
執筆者:大塚 ひかり
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