会話することが苦手なADHDグレーの不注意傾向の子どもに対しては、「話す力」より気にしてほしいことがあります。彼らの本当の困りごとに目を向け、聞けた、話せた!という会話の成功体験を作り出し、子どもとのコミュニケーションを楽しみましょう! |
大事なポイントを見逃している?会話が盛り上がらないことをあきらめないで!
発達障害の診断があってもなくても、我が子とコミュニケーションがうまくとれないと悩むお母さんは多いと思います。
学校でのできごとを尋ねても「忘れた」「分からない」「普通」などとクールに切り返され、会話がまったく盛り上がらない…といったことはありませんか?
小学生だけど早くも反抗期がやってきたのかな、この子はこんな性格なのだろうな、と思い込んであきらめていませんか?もしかしたら大事なポイントを見逃しているかもしれません。
幼児期~小学校低学年男子の「忘れた」「分からない」「普通」というあっさりした返事に隠された真の困りごとに目を向けてみませんか?
会話することが苦手な子どもについやってしまいがちな対応
私の息子は、幼児期から会話することが苦手で、あまり意思疎通ができないタイプでした。
話しかけても聞いているのか聞いていないのか分からないし、保育園でのできごとを本人の口から聞いたこともありません。
すべて先生からの連絡と掲示板で知るだけ…他の子どもたちが楽しそうに「自分の話を聞いて!」とお母さんに駆け寄っていく姿がうらやましくて仕方がありませんでした。
小学生になると、担任の先生やママ友との距離も遠くなり、大人から聞く情報が減ってしまうという事態が待っていました。
自分も小学生ママとして1年生ですから、学校からのお便りだけで分からない細かい不明点がたくさんあり、大変困りました。
学校から帰ってきた息子に「今日、学校はどうだったの?」「先生はなんて言っていたの?」「いつも友達と何して遊んでいるの?」とたくさん質問をしました。
息子は話すのが苦手だから、なんとか話をさせる練習をさせなくちゃと躍起になっていたと思います。
話をさせようとするほど息子の顔は固まっていき、「知らない!」「何もない!」と怒ってそれ以上の会話を拒否してしまうようになりました。
ADHDグレーの不注意傾向な子どもの「話す力」より気にしておきたいこと
子どもの脳を発達させるためには、親子のスムーズなコミュニケーションがとても重要です。そのため、会話のキャッチボールが成立しづらい状態はできるだけ早く解消することが望ましいでしょう。
そもそも、なぜ息子は「忘れた」「分からない」「普通」と言っていたのでしょうか。それは、反抗期でも性格でもありません。
「男の子ってそんな感じだよね」と様子を見てしまってはいけない、息子のタイプ特有の困りごとが隠れていたのです。
不注意傾向の強い子どもは「聞く」ことが苦手です
息子は、注意欠陥多動性障害(ADHD)のグレーです。特に、不注意優勢型といって「注意力」の部分に苦手を抱えています。
他のことに気をとられてしまうため、私が話しかけていることの多くが耳に入っていなかった可能性があり、コミュニケーションが一方通行になっていました。
不注意傾向の強い息子は、「聞く力」が極端に弱かったのです。「聞く力」が弱く聞けていないということは、脳に入っていないということ、これは経験していないことも同然です。
家族とのコミュニケーションはもちろん、学校でのできごともすべて、そのような状態だったと考えられます。
まず「話す力」を鍛えようと練習させるのではなく、それ以前にもっと大切な課題があったのです。
あなたが伝えたいことは本当に伝わっていますか?
あなたの話は、ADHDやADHDグレーゾーンの不注意の傾向が強い子どもにもきちんと届いているでしょうか?
会話のキャッチボールが成立しないのは、アウトプットするための返す力がないのではなく、インプットするための受け取る力が弱いのかもしれません。
聞くことを苦手とする子どもを育てていく私たちにとって、“伝えた”と“伝わった”は全く違うものです。子どもに伝わる会話を心がけていきたいですね。
楽しい会話への第一歩。聞けた、話せた!の成功体験を作り出す方法を伝えます
繰り返しになってしまいますが、息子のように不注意の傾向が強い子どもは、どうしても「聞くこと」が苦手になりがちです。
楽しい会話の第一歩として、まず聞いてもらうことが大切です。そこで重要なのは、他の刺激を入れつつ「聞く力」を補ってあげるということです。
私が実践したことをご紹介します。
まず聞かせる!お母さんの声をADHDグレーの不注意傾向の子どもに届けましょう
- 子どもの近くで、目線を合わせながら話しかける
- 肩をトントンとたたく、頭をなでるなど子どもに触れながら話しかける
- 最高に笑顔で、穏やかな声で、ゆっくりと間をとって話しかける
- 最後に「お母さんのお話、しっかり聞けたね」と伝える
ADHDやADHDグレーゾーンで不注意の傾向が強い子どもは、自分に話しかけられていることに気づかないことが多いです。
「今、お母さんは君に向かって話しかけていますよ!」というサインをしっかりと送りましょう。
予想以上に効果的だった「穏やかな声で」というテクニックはぜひ試していただきたいです。とげとげした低い声ではなく、丸みのある優しい声で話しかけてみてください。
子ども自らがうきうき聞きたくなる声を想像することがポイントです。
私の息子は、こういったことを繰り返していくことで、話しかけても上の空…だった状態から返事が返ってくるようになってきました。
少しずつですが、「今私が伝えたかったことが伝わったな」と実感することが増えてきました。
目で見て分かる「聞いているよ」のサインを送る
子どもが少しでも自分のことを話してくれた瞬間は大チャンスです。この機会を逃すことなく、目から入る情報を交えて分かりやすく反応してあげてください。
- 自分が何かしているときは手を止めて聞く
- しっかりしたあいづちを打つ、オーバーなリアクションで応える
- 最高に笑顔で聞く
- 最後に「お話よく分かったよ、お母さんは嬉しかったよ!」と伝える
不注意の傾向が強く、耳から入る情報のルートが極端に狭い子どもに対しては、目から入る情報でたくさんのことを伝えることが効果的です。
今度は「今、お母さんは君の話を聞いていますよ」ということを視覚的にアピールすることが重要です。
そして、お話ができたらたくさんほめてあげましょう。こうすることで「自分の伝えたいことがちゃんとお母さんに伝わった」という成功体験をたくさん積ませてあげることができます。
話すことが苦手だとばかり思っていた私の息子は、「聞く力」こそ今でも積極的にフォローしているものの、工夫しながら楽しく会話できるようになってきました。
まず第一に聞けたこと、そして話せたこと。これらの行動をしっかりとほめて、成功体験として記憶に残してあげましょう。
積み重なった成功体験は自信となり、グングン会話する力が伸びていきますよ。
親子のスムーズなコミュニケーションは、子どもの発達を加速させる最高のサプリメントです。ぜひ、試してみてくださいね。
執筆者:大塚 ひかり
▼不注意な子どもに届く声かけの方法、もっとたくさんあるんです。楽しい会話のヒントはこちらから。