苦手の理由はワーキングメモリーが低いこと!?勉強の壁にぶつかる子どもを救うシンプルな学習支援の鉄則

がんばっているのに、学校で勉強の壁にぶつかってしまう発達障害やグレーゾーンの子どもたち。その理由は、ワーキングメモリーが低いことに関係しているかもしれません。まず、ワーキングメモリーを知ることから、彼らに合った学習支援を考えてみませんか?

勉強の壁?でこぼこキッズとワーキングメモリー

発達にでこぼこのある子どもたちの中には、学校での勉強につまずいてしまう子も多くいると思います。

理解に時間がかかるため、同級生と比べて勉強が遅れがちになり、どんどん差が開いていく…。

学習の時間が大きなウエイトを占める学校生活において、このような周囲との差から生まれる不安や劣等感も、学校に行くのが嫌だ!と感じる原因の1つです。

勉強に困難を感じているでこぼこキッズは、ワーキングメモリーが低い傾向があるようです。

ワーキングメモリーは、学習とは切っても切り離すことのできない短期的な記憶と処理に関係します。

お母さんたちが、彼らのこの苦手ポイントをどうフォローしていくか。それによって子どもの学校生活がどんなものになるか左右されるかもしれません。

通常級でがんばるでこぼこキッズの世界

ママたちの悩みどころ…「少し」ゆっくり成長タイプの学習支援

現在小学校2年生の私の息子は、乳幼児期から言葉の発達に遅れがあり、同級生に比べて少しゆっくり成長しているタイプです。

この「少し」ということが悩むポイントの1つでした。

市の検診では「様子を見ましょう。何か困ったことがあれば、また…」と言われたことも。

様子を見るって、一体どうすればいいんだろう。

悩んでいる間にも就学の時はやってきてしまい、きちんとした対策をとる前に息子は1年生になりました。

グレーゾーンの息子は支援級ではなく通常級へ。予想通り、平均的な発達の子どもに比べると学校の授業の理解は困難な様子でした。

勉強に困難を感じている子どもが苦手なこと

息子が勉強に困難を感じている理由は、ワーキングメモリーの働きが弱いことにありました。

ワーキングメモリーとは、脳の作業台などと呼ばれ、一定時間にどのくらいの情報を覚えて処理できるか?という力のことです。

例えば、学校の先生が「教科書25ページを開けて、問3の問題を解きましょう。できた人はプリントを読んで待っていてください」と言ったとします。

この力がしっかりある子は、「25ページ」「問3」「できたらプリント」と、たくさんの情報を広々した作業台の上に乗せてサクサク行動に移すことができます。

一方で、ワーキングメモリーが低いタイプの子どもたちは、狭い作業台の上に乗せられる情報が少なく、処理するまでに至らないこともあります。

「えっと…プリント…?」くらいの状態かもしれません。他の25ページがどうだといった情報は作業台からぽろぽろこぼれて落ちてしまうのです。

ワーキングメモリーは年齢差と個人差がある

ワーキングメモリーの差はどのくらい?

先生の視点に立つと、ここは単なる授業のスタート地点。

問題に取りかかれるのが当たり前で、プリントをガサガサしている息子のようなタイプの子はただ人の話を聞いていない子のように見えるかもしれません。

しかし、脳の発達の視点を含めて少し考えてみましょう。

  • 先生と生徒にはワーキングモメリーに差がある
  • 生徒同士にもワーキングメモリーに差がある

まず、子どもが大人と同じスピードで頭に入ってきた情報を処理することはできません。体と同じように、脳も成長途中だからです。

一般に小学生より成人の方がワーキングメモリーの力は優れていますし、事前に準備して授業の進行を頭に入れている先生とは違って当然です。

それでも、ワーキングメモリーの発達には著しい個人差があるので、集団の中にはかなり発達が進んでいる子どももいます。

息子と同じ7歳の子どもが10人いたら、1番が10歳の平均レベル、10番では4歳の平均を下回るレベルと、同じ学年にも関わらず6歳もの発達の差があると言われています。(参考:ギャザコール,アロウェイ,2009)

差を理解していないとどうなるか

だから、ピッと処理できてしまう子がいる反面、全然できない子もいるんです。

大人にとってはできるのが当たり前だから、できない子に対して「ちゃんと聞いていましたか!?」と叱責したりします。

これは、ワーキングメモリーが低い子どもたちにとっては非常に酷なこと。努力不足でも、先生を困らせようとしているわけでもありません。

私は、まず周囲の大人がこの点を理解してほしいと思っています。

この点に気がつかず叱責を繰り返していくうちに、子どもたちは「自分は何をやってもダメだ」「がんばってもできない」「やる意味がない」とどんどん自信ややる気を失い、周囲との差が開いていく…という負のスパイラルに陥る可能性もあります。

今すぐにでも対応を始めていただきたいと思います。

ワーキングメモリーが低い子どもを伸ばす学習支援の鉄則

1つの課題で複数のことを学ばせようとしない

1つの課題で、効率よく複数のことを学ばせたいと思っていませんか?ワーキングメモリーが低い子どもにとっては、これはなかなか難しいことなのです。

少し説明しますね。

例えば、「日記を書く」という課題。がんばって書いた日記を「字が汚い!漢字で書いていない!」と添削されることがあるんですよね。

ワーキングメモリーをフル活用して文章を書いたのに…ダメ出しだらけでノートが真っ赤。これでは自信もやる気もなくなってしまいます。

マルチタスクが苦手な彼らにとっては、遠回りに思えても「日記を書く」という本来の目的のみに集中させてあげるほうが効率がよい場合があります。

日記の課題は「字をきれいに書く練習をかねているから…」「学習した漢字を使う練習にもなるから…」といった「一石二鳥」的な考えは一旦わきに置きましょう。

書いた文字が多少雑であろうと、学習済みの漢字がひらがなで書かれていようと、「あったできごとを文章にできる」ということができていれば花丸!

しっかりと褒めて「日記が書ける」という脳の回路を固めてあげます。

脳に回路ができてくると、注意力を下げた状態であっても、その行動がスーッとできるように変わっていくので安心してください。

子どもの様子をしっかり観察し、今の課題ができるようになってきたら少しタスクを増やしてみるなど、子どものペースに合わせて課題の難易度を調節します。

この繰り返しで、できることはどんどん増えていきますよ。

すでにもっている記憶の力を借りる

算数の文章問題であれば「けんた君はたかし君より50円多く持っていました」など、架空のけんた君の話はワーキングメモリーの負荷が大きく、その先のイメージを持ちにくいことがあります。

家族や友達などの身近な人や、好きなアニメのキャラクターの名前を当てはめるほうが分かりやすく感じることもあるでしょう。

漢字の学習であれば、「田」は田んぼの形に似ているね!であったり、旅行で出かけた京都の「京」だよ!と話せば印象に残るかもしれません。

新しく学ぶことを、いかにしてすでに子どもがもっている記憶と関連付けられるかがカギを握ります。記憶できる範囲がぐっと広がりますよ。

応援するよりも大切なのは○○すること

やればできるのに…と思われがちな通常級でがんばる発達でこぼこキッズ。

ついつい「やる気出してやりなさい」と言いたくなりますが、ワーキングメモリーが低いという特性を知ることで少し見方が変わりませんか?

4歳の子が、7歳の子と同じように集中するってとても大変だと思います。やればできるのかもしれないけど、相当な努力が必要なはずです。

脳をフル活用してがんばっている彼らの学習支援の一番の鉄則は、できないことを応援するのではなく、できたことに目を向けて褒めてあげること

できることは確実に積み上がっていきますし、「自分にもできる!」と思う気持ちは、大人になってから大活躍する自己効力感につながっていきます。

これは学校でお勉強ができることより、ずっとずっと大切なことかもしれません。子ども時代より長く続く大人としての時代をどう過ごせるか、お母さんの力にかかっています。

子どもが書いた日記を読んだ感想を、あなたはどう伝えますか?また書きたいと思う声かけ、できていますか?

親子のスムーズなコミュニケーションは、子どもを発達させる最高のサプリメントです。ぜひ、参考にしてくださいね。

執筆者:大塚 ひかり

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