母乳育児のメリットのホントの話~おっぱいをやめる時期を正しく選択するためのポイントをお伝えします

母乳で育ててきたけれど、そろそろやめようかな…。母乳育児には、たくさんのメリットが存在します。それでもいつかはやめる時期が訪れる母乳育児。今後どうすべきか迷っているママへお伝えしたいことがあります。ぜひ「知っている」上で選択してくださいね。

母乳をやめる選択は、アリ?

薬を使わないといけないから。
保育園へ行くから。
何度も乳腺炎にかかるから。

たくさんのお母さんが悩むことの1つに、まだ離乳が進まない時期の子どもがいるのに、母乳をやめる選択を迫られる場面があります。

そんな悩めるお母さんへお伝えしたい!と思ってこの記事を執筆しました。

私は、産科・婦人科専門の病院で薬剤師として働いています。

でこぼこキッズを育てるママ薬剤師として、今回は母乳育児×発達科学の側面からお話をしていきたいと思います。

薬剤師からアドバイス!過去にはこんな記事も書いています▼▼

母乳育児のメリットはたくさん!

あなたは、母乳育児のメリットと言われると、一体どのようなことを思い浮かべますか?

経済的な負担が軽い
ミルクをつくるより簡単で早い
おでかけの際の荷物が少なくて済む
産後の体重が落ちやすい
親子のスキンシップの時間…

多くの方は、このようなところを想像するのではないでしょうか?このような生活上のメリットの陰で、実はたくさんの医学的、発達的なメリットがあります。

お母さんのメリット

◆母性を育み、親子の絆をつくる
◆産後の体の回復を助ける

母乳を与える刺激で、オキシトシンというホルモンが分泌されます。

これは別名“幸せホルモン”や“愛情ホルモン”などと呼ばれ、親子の絆を深めることにつながると言われています。

また、オキシトシンというホルモンは、産後子宮が元の状態に戻ることを助ける役割もします。

産後すぐだと、母乳を与えるタイミングで生理痛のようにおなかが痛くなるということも多いですよね。

これは、分泌されたオキシトシンが子宮を収縮させているからです。

子どものメリット

◆赤ちゃんにとって最適な成分
◆吸収・消化の負担が少ない
◆免疫力をアップさせる
◆肥満・糖尿病になりにくくする
◆認知能力によい影響がある

赤ちゃんの成長にとっても母乳のメリットは大きいです。

この記事で注目したいのは、5番目の認知能力への影響です。

ある研究では、「母乳を与えられたチーム」と「分泌不足で母乳を与えられなかったチーム」に分け、その後の認知能力の発達を7~8歳の時点で比べています。

その結果、母乳チームの平均の知能指数は8ポイントも高かった―つまりIQの差が8もあった―と報告されています。

標準偏差が15%(一般的な“平均”の範囲がIQ100±15)と言われる中で、その半分にも及ぶ差。集団でこれだけの差があるというのはとても大きな違いなんです。

子どもが小学生になったとき、IQが85か?90を超えているか?だと、おそらく生活の困り感に違いが出てくるのではないかと思います。

単純にわが子を母乳で育てればIQが8上がるというわけではないですが、「母乳チームの平均のIQは優位に高い」と表現されています。

これらの理由から、アメリカ小児学会では最低生後6ヶ月(できれば12ヶ月)の完全母乳栄養を推奨しています。

正しい知識を持たずに選択するのはもったいない

母乳育児を選択しないのは自由?

このような事実の裏側で「母乳で育て“なければならない”神話」のような考え方が一部のお母さんたちを苦しめている、という話を耳にします。

正直、昼も夜も関係なく授乳のことばかり考えていないといけないってつらいんですよね。

私もいろいろトラブルを繰り返した経験者ですので、本当によくわかります。

こういうこともあってか、最近では「母乳に固執しなくていんだよ!」といった考え方もよく聞くようになりました。

確かにそうですよね。ストレスをためすぎてお母さんが体調を崩してはいけないですから。

ですが、心配事が1つあります。

“母乳育児を選択しない自由”ばかりが強調されすぎていないかな?ということです。

表面上の話だけ聞いて「なんだか面倒なイメージがあるな…母乳にこだわらなくていいって聞くし、完全ミルクでいいか」と安易に考えてしまうお母さんが少なからず存在します。

母乳育児のメリットを知らずに、お母さん側の都合にだけ注目して母乳育児をやめる、というのは少しもったいないのではないかな?と思うのです。

正しく選択するための知識を、お母さんたちにもってもらえたらうれしいです。

薬物治療と母乳育児はだいたい両立できる

少し、お薬の話にも触れさせてください。

というのも、実は医療者もあまり理解していない場合があります。

たとえば、子育て世代に多い病気の1つに、うつなどのメンタル系の疾患が挙げられます。

もちろん専門医は心の病気についての知識はたくさんありますし、どういう症状にどんな薬を選べばいいか、ということはよーく知っているんです。

そして薬剤師も、いろいろなお薬のことを幅広く知っています。

ただ、医師も薬剤師も母乳育児の大切さはあまり知らなかったりするんです。

母乳育児のメリットを、薬物治療のメリットと天秤にかけるほど十分に知らない場合があって、

「母乳へ移行するデータがあるようなので、治療を優先して授乳はやめておきましょう」と深く掘り下げることなく母乳育児を卒業させてしまうことが少なくないんですね。

患者さんの立場だと、お医者さんや薬剤師さんがそう言うなら…と思ってしまいますよね。

実際には、多くのケースでお母さんの薬物治療と母乳育児は両立できます。

もちろん、花粉症や風邪などで使われるような薬の服用が、何か大きな問題になるということはありません。

無理しない!母乳をやめる時期のポイントは?

最優先したいのはママの気持ち

母子ともにやめどきのリズムが合うのが一番理想ですが、多くの場合はお母さんがやめる時期を決めるのではないかと思います。

このとき、頭の片隅に入れておいてほしいことが2つあります。

母乳育児には紹介したようなたくさんのメリットがあること、そしてそのために、できれば1歳くらいまでは与えた方がよいこと

とてもシンプルですが、とても大切です。ぜひ、これらを理解した上で選択してください。

そして最終決定は、やっぱりお母さん自身の(母乳の分泌トラブルなど)と、気持ち(授乳が強いストレスになる状況など)次第です。たとえば、

・母乳がなかなか出ない
・乳腺炎を繰り返す
・次の妊娠が分かった
・母乳を与えるという行動自体が苦手
・パパなど他の家族に育児を協力してほしい
・母乳にしばられず仕事をしたい
・子の母乳への執着で夜が寝られない
・やっぱり薬の母乳移行が心配

などです。特に、体に問題がなかったとしても、最優先したいのは気持ちです。

子育ては長期戦!序盤で全力ダッシュしないこと

というのも、出産の前後は、マタニティブルー産後うつ育児ノイローゼなど、多くのお母さんのメンタルが不調になりがちです。

ホルモンバランスの変動が原因になることが多いですが、人それぞれ家族のサポート体制が違えばストレスの感じ方にも違いがあります。

母乳の出方だって、赤ちゃんの性格だって、一人ひとり違います。

周りはみんなできているのに自分はうまくいかない…と責めないでください。私だってもっとがんばればできるんじゃないか…と追い込まないでください。

今後長く続く子育てのスタートで、全力ダッシュするのは絶対NGです!

最初でずっこけて動けなくならないように、“知ってる!だけど、無理しない!”をモットーに1歩ずつ進んでいきましょうね。

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(参考:伊藤真也・村島温子「薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳 改訂3版」南山堂,2020.8)

執筆者:大塚 ひかり

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