空気を読むのが苦手な自閉症スペクトラム(ASD)傾向の子どもは、静かにしなければならない状況でもおしゃべりが止まらなくて困ることがありますよね。悪気のないASD傾向の子どもになぜいけないのかを教えたいなら、理論的な〇〇が効果的です! |
静かにすべき場所でおしゃべりが止まらない!
言葉の遅れはないけれど、病院や図書館、博物館など、静かにしているべき場所にもかかわらず、しゃべらずにはいられない!というお子さん、いませんか?
例えば病院で…
「ねぇ、ママ見て!救急車が2台も入って来たよ!病気の人がいるのかなぁ?」なんてためらいもせずに、しかも大きな声で口に出すので、親のほうが周りを気にしてヒヤヒヤしてしまいます。
「静かにしなさい!」と注意しても、楽しくなってしまうとおしゃべりが止まらない…。
「あれ?うちの子、なんか空気読めないなぁ」と思ったことはありませんか?
ほかにも、興味があるとあちこち触って壊してしまったり、急に走り出して人にぶつかったり。
本人には全く悪気はないけれど、興味の方が勝ってしまい、周りがよく見えなくなって、トラブルが起こってしまうのです。
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恐竜が好きな自閉症スペクトラム傾向のNくん
私は児童発達支援事業所で保育士をしています。
6歳の自閉症スペクトラム(ASD)傾向のあるNくんは、おしゃべりが上手で知識も豊富です。
一方で、人の気持ちを想像したり、目に見えないことの理解が難しいので、「どうしてだと思う?」というようなあいまいな質問に答えるのは苦手です。
記憶力が良くてマニアックな知識があり、興味があることについては周りの状況を考えずに話し出してしまうところがありました。
ある日、Nくんがお母さんと一緒に博物館へ出かけたときのこと。
イベントで学芸員さんが話しているところを遮って「ブラキオサウルスってさ、恐竜の中で一番大きくてね…」と、Nくんは得意気にしゃべり出してしまいました。
質問タイムには、Nくんばかりが「ハイ!ハイ!」と聞きたがるので、他の子どもが遠慮してしまったそうで、Nくんのお母さんは「周りの親子の視線が痛かった」と打ち明けてくれました。
恐竜が大好きなNくん。
初めての博物館でテンションが上がってしまい、お母さんの声かけも耳に入らなくなってしまったのかもしれません。
なぜ注意されたのかが理解できない
Nくんは、お母さんに「今は黙っていなさい!」と注意されても、なぜ注意されたのかが理解できません。なぜでしょうか?
それは、「目に見えないものを理解することが苦手」という特性があるため、状況を把握することが難しく、今何が求められているのかが理解しにくいのです。
そのため、場面にあった行動を自然に学習することが難しいという特徴があります。
本人はそれがいけないことだとわからないから、思いついたことをただ素直に口に出してしまうのです。
悪気はないのに怒られてしまうということが繰り返されると、「また怒られたら嫌だな」と、慣れないことに挑戦することを避けようとしたり、自信をなくしてしまうかもしれません。
理論的な〇〇が効果的!
NくんのようにASD傾向があって言葉が達者なお子さんの場合には、強みの言語能力を活かす対応が有効です。
ポイントは、理論的に事前の説明をするということ。
博物館へ行く前の落ち着いているときに、場面ごとにどうしたらいいかを説明してあげましょう。
博物館がどういうところなのか、どんな行動をとればいいのか?
もし誰かがお話をしているときはどうすればいいのか?
聞きたいことがあるときにはどうすればいいのか?
他にも聞きたい人がいるときには?
など…
ていねいに状況を説明しながら、正しい行動と、なぜそうするのかの理由もお話してあげるといいですよ。
理論的なASD傾向のお子さんは、ちゃんと説明してもらって納得できると行動を修正しやすくなるのです。
例えば「博物館では、大切なものがたくさんあるから、見るだけだよ。触って壊れちゃったら困るでしょう?」というふうに。
このくらい教えなくてもわかるだろう、と思わず、事前に丁寧に説明することがポイントです!
Nくんのお母さんは、おしゃべりが始まってから叱るそれまでのやり方を変えました。
そして、「ここでは〇〇するよ。そうしないと△△だから」と事前に理由を説明するようにしたところ、Nくんが静かに待てるようになり、自然とほめる機会が増えたと報告してくれました。
執筆者:森山さとみ
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