発達障害「グレーゾーン」とは?診断されない幼児期の子どもの理解が大切な理由

ADHDやASDなどの発達障害とは診断されないグレーゾーン。特性は薄くても、本人やお母さんには深刻な悩みの場合もあります。環境要因で子どもの発達自体が大きく左右される幼児期にお母さんの感覚を大切にしてほしい理由を、発達障害研究の背景を交えてお伝えします。
 

発達障害の「グレーゾーン」とは?

発達障害の「グレーゾーン」とは、
発達障害の特性がいくつか見られるものの、発達障害の診断基準は満たさない状態を指します。

また、「発達障害かもしれない」と思いながらも医療機関を受診していない人が「グレーゾーン」だと自分で認識している場合もあります。

これだけ発達障害の認知度が上がってきていると、「うちの子、もしかして発達障害かも?」と感じて、この記事にたどり着いたママも多いのではないでしょうか?

落ち着きがなかったら注意欠陥多動性障害(ADHD)
お友達の気持ちがわからないから自閉症スペクトラム(ASD)
話しかけても聞いていないことがあるし、ADHDの「不注意」に当てはまるんじゃないかしら?
こだわりも強いし、偏食もあるし… これってASDなのかしら??

このように心配になって症状を検索すると、無限かと思うくらいの発達障害の特性が書かれたサイトが見つかります。

「当てはまることがある」と気づけるお母さんの大切な感覚

けれど、サイトなどに書いてあることを見ると、こんなことも同時に感じたことがあるのではないですか?
ADHDのこの部分は当てはまる気はするけど、そんなに多動じゃないしな…
ぼんやりはしているけれど、好きな絵本にはものすごく集中するしな…
こだわりはあるけど、そこまでお友達関係は気にならないしな…
こんな風に、「部分的には当てはまるのだけど、全部じゃない」ということが、お母さんたちを混乱させています。
けれど、お母さんがそう感じる感覚は、発達障害と診断されない「グレーゾーン」の子どもを理解するのにとっても大切な感覚なのです。

幼児期の発達障害グレーゾーンの理解が難しい2つの理由

このように、発達障害の診断名がつかないけれど当てはまる特性もある、グレーゾーン。
その中でも、とりわけ幼児期の発達障害・グレーゾーンの理解が難しい、その理由についてお話ししたいと思います。
私は大きく分けて、2つの理由があると考えています。
1つは、発達障害の研究が「専門家」によってされてきた歴史的背景があること。
もう1つは、幼児期の発達は環境要因の影響が、他の時期に比べ大きいこと。
ひとつずつ解説していきますね。

<1>発達障害の専門家による研究の背景

ネット上に溢れているいわゆる「発達障害」の特徴は、生粋の「ザ・ADHD」とか「ザ・自閉症」の特徴の解説がほとんどです。
これには、発達障害研究の歴史的な実施方法に要因があります。

発達障害のチェックリストや診断基準は、こんな研究結果からできている

研究者は、自分の専門分野に特化して研究を進めます。当然、ADHDの研究者は典型的なADHDの症例ばかりを研究します。
私も、大学時代にADHDの小学生のソーシャルスキルに関する研究に携わりましたが、そこで研究に協力してもらった子ども達は、全員「ザ・ADHD」の子どもたちでした。
研究では、曖昧な要素をできるだけ取り除く必要がありますから、これは仕方のないことですが、こうして、研究者たちが発見した発達障害の特徴がそのまま診断基準として医療の現場に降りてきています
そして、私たちはその診断基準をもとに子どものことを理解しようとしてしまいます。
だから微妙に、色々な特性が重なり合っている子や、そもそも、発達障害と診断されないくらいの、特性自体がそんなに濃くない子どもグレーゾーンの子ども達をみたときに「???」となってしまうのです。
現場の感覚では、「ザ・発達障害」の子どもに比べ、 グレーゾーンの子どもの方が圧倒的に多いと感じます。
すべての子どものうち、約10%近くが発達障害のグレーゾーンの特性を持っている、というのが発達障害の業界として「当たり前」になりつつあります。
30人のクラスだと最低3人は、発達障害とは診断されない「グレーゾーン」くらいの特性がある子がいてもおかしくないということです。

<2>幼児期の発達は「環境要因」が大きい

そして「発達障害と診断されない」くらい特性が薄い子どもが、イコール、
本人の悩みが薄いか?というと「そうでもない!」
というのが、難しいところなのです。
幼児の場合は、本人が困っている場合もあれば、お母さんが困っている場合もとてもたくさんあります。
だから、特性がうっすらとしたグレーゾーンの子ほど、ADHDか?ASDか?LDか?それともHSCか?などの「発達障害のどの診断名に当てはまるか?」にこだわらず、早くその子にどんな「特性」があるか気づいてあげることが重要だと私は考えています。
なぜなら、「幼児期ゆえの問題」である環境要因で、子どもの発達自体が大きく左右されてしまうということに強く絡んでくるからです。

「理解」がないと「怒られ続ける環境要因」となる

世間一般の子育てでは、子どもに現れている困った行動や苦手なことは、努力やしつけでなんとかなるという認識になってしまいがちです。
そのため、発達グレーゾーンの子どもが持つ「特性」への理解がないと、
やっぱりこの子の努力不足?
やっぱり母である私の育て方?
誤った認識から、本人が怒られたりお母さんが責められて傷つくなど、親子で攻められることに繋がってしまいやすいのです。
そして、大人から「怒られ続ける環境要因」により、子どもに特性が強く現れてしまうことがあるのです。

発達障害グレーゾーンは関わり方で「発症」を防ぐことができる!

このように考えた上で、誤解を恐れずお話しすると、
幼児期のグレーゾーンは、お母さんや周囲の理解・関わり方一つで、
発達障害を発症させることも、
発症させずに済ませることもできる
のです。
そのくらい、環境要因(=コミュニケーション) が大きいのが幼児期の発達です。
だから「発達障害の診断はないけれど、気になることがある…」とお母さんが感じているグレーゾーンの子どもには、
その子の「特性」に早く気づいてあげて、
「努力不足ではない」と早く理解してあげて、
その子らしさをしっかりと伸ばしてあげてほしいと思います!
執筆者:石澤かずこ
(お母さんの小学校★ななほし代表)

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