ADHDなどで不注意の傾向があると、特に就学以降問題になりやすい忘れ物。「忘れ物ない?」「忘れ物しちゃダメ!」と声をかけていませんか?スモールステップで対策をして、子どもたちが自信を失わない小学校生活をスタートさせましょう。 |
小学校入学直後の忘れ物問題はちょっと特別
注意欠陥多動性障害(ADHD)があったり、不注意の傾向が強い発達でこぼこキッズにとって、小学生以降に問題になりやすい忘れ物。
小学生ともなれば、自分で学校の用意をさせるようになる家庭がほとんどかもしれません。
そうなると、彼らの行動がとっても気になってしまいますよね。なぜ自分で時間割を合わせることができないんだろう、なぜ忘れないように気をつけないんだろう…とイライラしていませんか?
もともとうっかり屋さんの彼らですが、特に就学時はちょっと特別です。環境の変化が大きく、子どもたちの負担はお母さんの予想以上かもしれません。
ADHD不注意キッズならではの大胆な忘れ物事件
私の息子は、ADHDグレーゾーンでとても不注意の傾向が強いタイプです。
小学校1年生のとき、国語の教科書を自宅に置き忘れたまま登校したにも関わらず、忘れたことに気づかず授業を受けてきたことがあります。
また、玄関に準備していた洗濯済みの給食当番のエプロンを持っていくのを忘れてしまい、次の当番のお友達に手渡すことができなかったこともありました。
我が家ではまだ経験がありませんが、ランドセルを忘れていった、持ち帰った筆箱に鉛筆が1本も入っていなかったなどということもよく聞くお話です。
私の息子は、普段からぼーっとしているせいか、忘れ物という概念すら持っていなかったように思います。ため息交じりに「忘れ物しないように気を付けようね」と声をかけていましたが、のれんに腕押し状態でした。
就学時のADHD不注意キッズの頭の中
ワーキングメモリーの働き、知っていますか?
ADHDなどで不注意の傾向があると、ワーキングメモリーという機能に弱さを抱えている場合が多いと考えられています。
ワーキングメモリーは脳の作業台などと表現され、短期的な記憶と処理に関わる力のことを指します。
この力は、単純に学校へ何を持っていくべきか、ということを覚えていられるかどうかということだけでなく、様々な情報をまとめて処理する役割をもっています。
目的(国語の授業で使うため)や条件(月曜日だから他にも必要なものがある)などを覚えておくということまでもワーキングメモリーの負荷となるんですね。
きっとつらい…就学とワーキングメモリー
就学したという新しい環境は、それだけでかなり脳の作業台を圧迫します。物理的にも慣れない学校という場所、よく知らない先生やお友達、時間割で授業が進んでいくという新しい当たり前。
ワーキングメモリーに弱さのある子どもたちにとって、もうこの辺りで脳の作業台はいっぱいかもしれません。
その上で、「トイレは休み時間に行く」とか「ここに連絡帳を置く」など細かなルールを学ばなければなりません。
その一部が「教科書を忘れずに持っていく」「給食当番のエプロンは、1週間使ったら洗って次のお友達に渡す」といった、持ち物に関すること。
「じゃあ学校へ持っていくものは?」という段階に到達するころには、いろいろな情報が処理できないまま、ぽろぽろと作業台からこぼれ落ちているような状態になっていることもあるでしょう。
記憶する・考える・行動するといった次のステップへ向けて処理したいのに、作業台が狭くてうまく処理できない…。こんな状態は脳にとってもつらいのです。
ADHD不注意キッズは失敗から何かを学ぶことが難しい
息子の頭の中がこんな状態だと知らずに、いつか失敗から学習するだろうだなんて考えていたのは私です。
これは経験を積んだ大人ならではの考え方であり、特に不注意の傾向のある子どもにとっては非常に難しいことなのです。
このような子どもたちを叱責し続けることで、彼らの自信はどんどんなくなっていってしまいます。
この結果、うつ症状やひきこもり、過度に反抗的な態度をとるなどの二次障害につながっていく可能性もあるんです。
ADHDなどで不注意の傾向が見られる、就学を控えた年長さん、もしくは小学校1年生のお母さん。まずはこの点を理解していただくところから、忘れ物対策を考えていきませんか?
スモール3ステップ!忘れ物対策はココから始めましょう
ADHD不注意キッズに「忘れ物ない?」は効果がない
まず、大前提として知ってください!息子は今小学校2年生になっていますが、「忘れ物ない?」と声をかけることは驚くほど効果がありません。
ワーキングメモリーの弱さ際立つ息子にとっては、玄関先で靴を履く、ドアを開ける、お母さんが何か言っている、反射的に返事をする、じゃあ行ってきます…といった感じなのだろうと思います。
後々になって「忘れ物ない?って確認したでしょ!?」と言って叱ったところで、息子の記憶には何も入っていないと思います。
それどころか、叱ったことで子どもの頭に残ることは「お母さんに怒られた」だけなので、叱るのは本当に意味のないことです。むしろ逆効果なのでやめましょうね。
なぜ叱ることが逆効果になるのでしょうか?こちらも合わせてご覧ください。▼▼
ステップ1:「忘れ物しちゃダメ」より伝えるべきことは?
ADHD不注意キッズの忘れ物対策を考えるとき、しっかりと子どもに伝えなければならないことがあります。それは「忘れ物なしで学校へ行けることがマル」ということです。
大人にとっては当たり前のことですが、それは子どもの当たり前ではありません。
就学時のいろいろな環境の変化によって、ワーキングメモリーの負荷がかかっているADHD不注意キッズ。周りの空気から、忘れ物がないようにしなくちゃ!と学ぶことはかなり難しいはずです。
ですので、お母さんの声かけで「忘れ物なしで学校へ行けることがマル」ということを知らせてあげましょう。
やり方はとてもシンプルです!忘れ物をした日に叱るのではなく、忘れ物がなかった日に褒めるだけです。
ステップ2:お手伝いありでOK!「成功体験」を作る
忘れ物なしで行くなんて無理なんだけど…という声も聞こえてきそうですが、最初は全部お母さんと一緒に準備してもいいと思います。
100%お母さんが手伝っていたとしても、無事に忘れ物がなかったら「忘れ物なしで行けたね♪」と伝えます。
必ず言語化して気づかせることが必要です。当たり前だと思って何も伝えないのは、ADHD不注意キッズには全く意図が伝わらないので、言葉にすることを忘れないようにしてくださいね。
これを繰り返していくうちに、「忘れ物なしで行けることが正解なんだ」と分かってきます。
分かってきたら100%のお手伝いを90%に、80%に…と減らし、自分でできた!という成功体験を積み重ねてあげましょう。少しずつできるようになっていくはずです。
ステップ3:発見!ADHD不注意キッズだからこその褒めポイント
忘れ物があっても叱らないようにしましょう。もともと不注意の傾向が強いと、気をつけていても忘れ物をしやすいのです。
「今日ノート忘れちゃった」などと報告があれば、逆に褒めてあげるといいと思います。
忘れ物をしたらいけないということ、そして今日は忘れ物があったということに気づけたということですから。無事にスタートが切れたんだ!と認めてあげてください。
どうしても不注意の傾向がある場合は忘れ物を完全に0にすることは難しいかもしれません。このスタートが切れたことを確認して、次のステップに進んでいきましょう。
まずはここからです。ADHD不注意キッズが自信を失わないワクワクの小学校生活がスタートできることを心から応援しています。
親子のスムーズなコミュニケーションは、子どもを発達させる最高のサプリメントです。ぜひ、参考にしてくださいね。
執筆者:大塚 ひかり
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