発達の検査をして、ワーキングメモリーの結果がとても低いと心配になりますよね。学校生活を送る上で、学習のつまずきへどう対処するかは1つの課題となるかもしれません。子どもの水準に合わせたこんなやり方で、彼らの可能性を信じて伸ばしていきませんか? |
知能検査WISC…ワーキングメモリーが低い!
就学前になると、小学校で新しく始まるお勉強事情が気になってくるお母さんも多いのではないでしょうか。
私も、その一人。
言葉やコミュニケーション力の発達がゆっくりだった息子が、新しく始まるお勉強の世界でちゃんとやっていけるのか不安でいっぱいでした。
この不安を払拭することができないまま入学のときを迎え、彼は支援級ではなく通常級へ在籍することになりました。
予想通り、「ちょっとしんどいのではないかな?」と思うことも…。
そんな環境の中、彼は小学校2年生のときにWISCという知能検査を受けました。
私がそこで目の当たりにしたのは、ワーキングメモリーという指標が平均の範囲を大きく下回った65という結果でした。
ワーキングメモリーが低いと学習にどう影響する?
ワーキングメモリーとは、脳の作業台などと表現され、一時的な記憶と処理に関わる力のことを指します。
発達でこぼこキッズは、この分野を苦手とする場合も多いかもしれませんね。
こちらで詳しく!ワーキングメモリーと学習支援▼▼
メモリー=記憶ということだけあって、このワーキングメモリーの弱さは学習面に影響すると言われています。
実際どのような感じになるか気になりませんか?息子は毎日、こんな様子で過ごしています。
現在小学校3年生ですが、足し算・引き算に指を使います。「8、9、10…」と声に出してつぶやいていることも多いです。
脳の中の作業台が狭いので、実際に目に見える形に、耳で聞こえる形にするために指や音声を使っているようです。
覚えておけるフレーズや文字数が少なく、何度も頭を上げ下げします。しかも、書いているうちにどこまでいったかわからなくなる…というおまけつきです。
特性上、集中できる時間が短いので、ぼーっとしている間に完全に置いていかれることもあるようです。
自分の思いを文章に変換し、それをノートに書くということが、脳の作業台の広いスペースを使ってしまうためです。
また、濁点や句読点が抜けるということも多いです。
脳の作業台のスペースを奪ってしまう“何か”があります。
たとえば、
足がかゆい。
昨日爪を切った。
鉛筆が新品。
などです。
そんなことで…?と思うようなことが彼の注意を散漫にします。
少し時間がたって我に返ったとき、どこまでいったかわからなくなってそれ以降の授業は放棄せざるを得ない…ということにつながっていきます。
問題文の字を音に変換する、という「読む」ことだけにワーキングメモリーを使ってしまい、実際何を問われているか読み解くところまで至らないようです。
文を「読む」ところを私が手伝うことで脳の作業台のスペースが広がり、「あ、わかった!」となることもあります。
国語であれば「五文字で答えなさい」の“五文字”だけを頼りに答えを探します。
算数であれば「全部で~」と書いてあったら足し算、「残りは~」と書いてあったら引き算だと思い込み、文章中の数字を適当に組み合わせて解を出そうとします。
文章読解が苦手なので、何とか答えを出そうとする彼なりの工夫なのだと思います。
あなたのお子さんはいかがでしょうか?
もし似たようなことがあれば、息子と同じようにワーキングメモリーの力の弱さからくる学習のつまずきがあるかもしれませんね。
学校生活は関わり方次第で大きく変わる!
学習支援の大原則!「できない」と思わせてはいけない
彼らの学習を応援する上で、乗り越えるべき課題は2つあると思います。
1つは、特性による学習のつまずきのせいで子ども本人が「できない」と思ってしまうこと。
もう1つは、集中することが苦手なためザ・努力!ということを避けることが多いので、周りから「やる気がない」と思われてしまうこと。
自分自身が「できない」と思う気持ちに、周りからの「できない」レッテルのような言葉がけという負の相乗効果の力はとてつもなく大きいです。
1日の大半をお勉強で過ごす学校生活で、できなかった・失敗した・叱られた…こんな経験が積み重なると自信を失ってしまいますよね。
だからむやみに「できない」という気持ちを抱かせてはいけないし、周りの理解と関わり方がとても大切というわけです。
生まれもった特性?環境で変えられる?
ワーキングメモリーと学力は関係することが大いにありますが、イコールではありません。
たとえば、背の高さがどのくらいか?ということは遺伝的な要素が多く、生まれもった特性です。
一方で、体の重さはどのくらいか?ということは、ある程度身長が関係していたとしても環境で変えられることですよね。
同じように、ワーキングメモリーの力は生まれもった特性という色が強く、身長のようになかなか変えることが難しいです。
反面、学力はワーキングメモリーが関係しているものの環境から受ける影響が大きく、体重のように十分変えていける力だと考えられています。
もちろん学力がすべてではないですし、学歴エリートになることが幸せとも限りませんから、無理する必要はありません。
ですが、目に見える学力は環境で変えることができるのです。これって、ちょっと希望がわきませんか?
子どもの可能性をなめちゃいけない
水準に合わせたやり方で「できた!」を引き出そう
わからなくなって放棄してしまった1時間の授業で、子どもが得るものはほとんどありません。
計算では思う存分指を使えばいい。
黒板を書き写すのが難しいならプリントの穴埋め学習にしてもらったらいい。
大事なのは、子どもが「分かった!」と思える瞬間を増やすことです。
もしあなたがお子さんの知能検査の結果を持っているのであれば、彼らの水準がどの程度なのか?をまず探ってほしいのです。
そして、水準に合わせたやり方とお母さんの声かけで、子どもの「できた!」をたくさん引き出してあげてほしいと思います。
「普通はできない…」常識を超えた息子が育む自己○○感
息子が2年生のとき、利用中の学童で発達の巡回相談の機会をいただいたことがあります。
そこで、検査者の先生が宿題に取り組む息子の行動観察をしてくれました。
スムーズに足し算の筆算をこなしていく息子の様子が、事前に提出していたWISCの検査結果とかみ合わなかったそうです。
「ここまでワーキングメモリーのIQが低いと、普通はできない」
そう言われました。
IQ65だったらこのくらいでしょ…という常識を覆した彼。
これには理由があります。
自分が学習することには価値があると思える力、”自己効力感”が育っているからです。
自己効力感についてはこちらの記事を参考にしてください▼▼
私がどんな関わり方をしているかと言うと、できたことに目を向けて褒めるだけ。
できないことをできるように特訓するのではなくて、水準に合わせて褒めるだけ。
これにより、息子はスモールステップで1つ1つ成功体験を積み重ねています。
自分はできるという気持ちを育んでいるからこそ、次もやってみようとがんばることができるのです。
1年生で新しく始まった漢字80字も、2年生で新しく学んだ九九も、周りのお友達と足並みそろえてマスターした息子に、子どもの可能性を信じずにはいられません。
彼らの可能性と、お母さんの声かけのパワーを、なめちゃいけませんよ♪
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執筆者:大塚 ひかり
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