発達障害の子どもの可能性を伸ばすのは、大人の理解とコミュニケーション〜ADHDのAくんとの出会いから学んだこと

発達の世界にすっかり魅了されている私の原点は、学生時代に出会った発達障害ADHDのAくんでした。彼が成長していく姿から、子どもの可能性を伸ばすのは大人の理解とコミュニケーションだと確信したのです。子どもたちの才能や可能性を信じ、伸ばしていくママになりませんか?

私の原点をお話しします

私、石澤かずこは、発達障害・グレーゾーンの親子を救う仕事をしています。

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2019年のGW、信州の地へ家族で旅行に出かけました。この旅の目的は2つ。
一つは、子どもたちに都会では体験することのできない五感を使った遊びを思いっきり体験させてあげたかったこと。
そして、私にとってとてもとても大切だった、もう一つの目的。
それは、私が発達障害の子どもたちと初めて出会ったときの感動や気持ちをもう一度ありありと思い出すことでした。

先生になりたい!と思っていた学生時代

私は、大学の4年間を信州の地で過ごしました。学校の先生になりたい!と信州大学の教育学部に入ったのです。
欲張りな私は、「ただの先生よりカウンセリングができる先生の方がお得じゃない!?」という気持ちで、信州大学教育学部の中にある「教育カウンセリング課程」で心理学を専攻しました。
大学2年生。心理科は、教育学部の中でもかなりハードな授業が多い専攻らしく(入ってから知りました)、フラット3と呼ばれるものすごくヘビーな必修授業がありました。
「心理学実験法」
「心理学調査法」
「心理学検査法」
寝る間も惜しんで研究し、レポートにまとめ、必死で提出しなくてはいけないフラット3と呼ばれる授業。これをクリアしなくては進級すらさせてもらえません。
私はこのフラット3のなかの「心理学検査法」に魅了されてしまったちょっぴり変態です(笑)
知能検査を使って子どもの見えない能力を見つけていく。この探偵のような過程がたまらなく面白く、魅力的に感じました。

発達障害の研究との出会い

もっとこの道を極めたい!!!
そう思い、検査法を担当していた教授の研究室に入ることを決めました。
その研究室が、発達障害の研究を専門としているなんて、その時は知りもしなかったのです。
発達障害って何ですか??
LD?ADHD?
何の頭文字??
そんな知識の状態で飛び込んだ発達障害の世界。そこで私は自分の人生を変えるほど衝撃的な出会いをします。
忘れもしない。超がつくほど多動キレると手が付けられない、ジャイアンみたいに大きな体の注意欠陥多動性障害(ADHD)のAくん
Aくんがいなかったら、今、私はこの仕事をしていなかったと思います。彼は私に、発達障害の子どもたちの無限大の可能性を見せてくれました。

ADHDのAくんとの出会い

さて、私の人生を変えるほどの衝撃を与えてくれたADHDの男の子Aくん。出会ったとき彼は4年生。体が大きく、まさにジャイアンのような印象の男の子でした。

研究室のトレーニングでの出会い

彼と出会ったのは、自分が所属した大学の研究室のある研究セッションの中でした。
ソーシャルスキルトレーニングという、友達と関わることが苦手な子やルールを守ることが苦手な子へ、小さなグループの中で社会性のトレーニングをするグループセッションです。
今でこそ、幼児期の「療育」といえば少人数で、ソーシャルスキルに近いことを教えていくのがスタンダードになりましたが、当時はまだ、療育といえば、比較的障害が重度のお子さん向けの通園タイプ(1日、幼稚園の代わりに通い、生活習慣からトレーニングする)が主流でした。
大学の研究ですから、条件を整えて、トレーニングの効果測定をしていきます。
研究グループに参加してくれた発達障害の子どもたちは、 小学校1年〜4年生までの男の子、全員ADHDの診断があることが条件で募集されました。
集まった子どもたちの中でもAくんはひときわ大きく、感情の起伏が激しい「乱暴者」に見えるような気質の持ち主でした。

パニックを起こし暴れたAくん

トレーニングの第1回目は、子どもたちの普段の様子を観察するために何もセッティングせず、ただ、お部屋と自由な時間、自由に遊んでいいおもちゃだけを用意して、子どもたちに自由に遊んでもらうセッションを行います。
これは、ベースラインを取るためで、普段の様子を知らないとトレーニングの効果があったのかどうかを検証することができないため行います。
このときの様子は今も脳裏に焼き付いています。
集まったのは全員、かなり重度のADHDの持ち主
全員、超多動
全員、超衝動的
自由に遊ぶのは大好きですが、みんな譲ることができなかったり、マイルールがあったりして、そこここで喧嘩が勃発していきました。
大興奮で遊ぶ中で、冒頭にお話ししたAくんがついに、パニックを起こしました自分の遊びたいおもちゃをお友達に取られてしまったことが原因でした。
顔を真っ赤にして泣き狂いながら、近くにあるものや人をなぎ倒すように暴れるA君。男性スタッフ数人で、A君を抱きかかえ、外に連れ出しようやくクールダウンさせました。
私はといえば、ただ呆然とその様子を見ていることしかできませんでした。
当時大学2年生。一番下っ端の、二十歳ソコソコの私。 まだ子どもと関わる経験もほとんどなく、発達障害の知識もほぼない、そんな状態でお手伝いのスタッフとして研究チームに入っていた私。
うまく立ち居振舞うことなんかできず、もれなくA君の逆鱗のパンチをみぞおちに喰らいました(苦笑)

「ADHDって怖い…」

このとき、この状況を呆然としながら見ていた私が思ったこと。
それは、「ADHDって怖い…。」でした。
振り返るだけでゾッとします。こんな風に誤解を受けていく子どもたちが、世の中にはたくさんたくさんいる訳です。
けれど、なんの知識もなく、この状況を見て、おまけにパンチまでもらったら…
「怖い人たちだから近づかないでおこう」そう思うのも当然なのかもしれないと感じます。
無知は罪です。
私が無知のまま、誤解したままにならずに済み、さらには、発達障害の子どもたちに魅了されていくことになったのは紛れもないAくんのおかげ。
Aくんは奇跡の姿を私に見せてくれたのです。
正しく理解し、心から信頼し応援すれば彼らは必ず答えてくれるのです。

2つのことを変えると激変したAくん

Aくんがいない!?

地獄絵図のような(私にはそう思えた)第1回目を終了した、ソーシャルスキルトレーニング(SST)の研究チーム。第2回目からはプログラムされたSSTがスタートします。
先輩や教授陣が綿密な計画を練っていたのですが、研究室に入りたてのお手伝い要員だった私は、何がどんな風に話し合われ、これからスタートしていくのか、 知る由もありませんでした。
グループ当日。前回の、注意欠陥多動性障害(ADHD)のAくん尋常ではないパニックに、完全にビビってしまっていた私。正直、行きたくないな〜と思いつつ、恐る恐る子どもたちを迎え入れました。
グループが始まり、「なんだ、今日はAくんおやすみか」と、Aくんの姿がないことに少しホッとした自分がいたことを、今でもよく覚えています。
進行役の大学院生が子どもたちの前に立ち、SSTのクラスがスタートしました。
「今日は…おやすみは一人もいませんね!みんな元気に集まってくれてありがとう!」
そう子どもたちに語りかけたリーダーの言葉を聞いて、私は「え!?」と思いました。
Aくん、いなくない…?
よーく子どもたちの顔を見てみたら、ニッコニコの笑顔で穏やかに自分の席に座っているA君がいるではありませんか!
同じ子なのだろうか!?私はものすごい衝撃を受けました。
頬を紅潮させて、目に入るもの、触れるものを全てなぎ倒しながら泣き狂っていたAくんからは、想像もできないほど穏やかな彼がそこにはいました。

暴れてしまった1回目と、2回目のトレーニングの違い

1回目の行動観察の回と、2回目以降のSSTクラスで違ったことは、子どもたちの置かれた環境と、子どもたちへ向けて発せられるコミュニケーションの違いのみでした。
2回目以降は、きちんと各自が座る席が決められています
一人、前に先生が立ち、この人に注目したらいいのだな、ということがパッと見てわかるような配慮がされています。
前の黒板には、今日の流れが書いてあり、子どもたちが見通しを持って活動に取り組めるように工夫されています。
先生に注目しやすいように、教室内には余計な装飾や掲示物はなく、周りのスタッフも、メインのリーダーが話すときは一切口を開きません。(余計な音の刺激を入れません)
子どもたち一人一人に、「君が困ったときはこの先生が助けてくれるよ」という補助のスタッフが紹介され、困ったときのサインも決めてあります。
活動中、子どもたちへのネガティブな声かけは一切なく、うまくできているところ、頑張っているところに対して、大人が肯定的な言葉をかけていきました
たったこれだけ。
環境とコミュニケーションを整えただけで、まるで別人かと思うほど、Aくんは穏やかに楽しそうに過ごすことができ、ゆくゆくは、このクラスのリーダー的存在になっていきました。

子どもを無限大に伸ばすヒント

こんな単純なことで!?
子どもたちの可能性って本当にすごい!!
可能性を活かすも潰すも大人の理解と関わりなのじゃないか!?
A君の様子の変化は私にとって本当に衝撃的でした。そして純粋に「子どもの発達って面白い!」と心を鷲掴みにしてくれたのです。
子どもたちの未来の可能性って実はすごいのです。
今は「問題児」のように見えている側面も、子どもの可能性を信じ、理解し、環境とコミュニケーションを大人の側が変えていったら、この子たちの本当の力は無限大なのです。
よく聞く言葉なのかもしれませんが、ここには真実があります。
私たち大人の理解コミュニケーションが、子どもたちの未来を決めていく。
そういっても過言ではないと私は信じています。
だからこそ、この事実を知って、子どもの可能性を伸ばす大人がどんどん増えていけば、幸せな子どもたちが世の中に溢れていくと信じていますし、
理解されずに悲しい、苦しい思いをしながら成長する子どもたちを一人も無くしたい!
そんな思いを強く思っています。
執筆者:石澤かずこ
(お母さんの小学校★ななほし代表)

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